カーボンクレジットの未来 ~環境価値市場の進化と挑戦~
今後、環境価値市場はどのように変化するのでしょうか。
今回のコラムでは、日本と世界の環境価値取引市場の動向と、課題を解説します。
環境価値取引市場は今後も成長見込み
地球温暖化や気候変動が起こる中、その原因の一つとなる温室効果ガスの排出量を減らすべく、カーボンニュートラルの動きが加速しているのは周知のことだ。それに向けた取り組みの一つである環境価値発行制度のプロジェクト登録件数は上昇傾向にある。
日本ではJクレジット制度が2013年に開始し、2018年には非化石価値市場が誕生。そして、2023年からJ-クレジットが東京証券取引所が実施する「カーボン・クレジット市場」で取引できるようになった。北米地域のREC、欧州のGOの市場成長を受け誕生した、世界50か国以上を対象としたI‐RECも2023年から日本でも発行可能となった。
環境価値の需要の高まりは取引データからも読み取れる。2023年にJ-クレジット制度に登録されたプロジェクト件数は1,000件を超え、非化石価値取引市場では2023年度に行われた取引の約定量が8TWhを上回った。また、国内だけでなく世界でも環境価値の需要は高い。昨今注目されているI-RECは、プロジェクト登録件数だけでも2018年に三桁台を記録し、2021年は1,457件、2022年は2,380件と増加し、取引機会が増加していることが伺える。(図1参照)
世界各国でこのような環境価値発行制度に参加する企業は増え、環境価値の需要は高まっている。(図2参照)今後世界中で環境価値発行制度や取引市場が増加・拡大することが予想される。
環境価値は追加性がない?
環境価値取引市場は今後も成長すると見込まれるが、環境価値の供給が不足する可能性があることが、この市場の大きな課題の一つである。再エネ証書を購入することで、安価に実質再生可能エネルギー100%を目指す需要家にとって、供給量不足によるダメージは大きくなるだろう。ゼロカーボン取引所では、自社電源からも環境価値を調達しているため今後も再エネ電源を増加し、環境価値の調達量も増やすことで市場のニーズに対応することが可能だ。
環境価値市場を盛り上げると共に温室効果ガスの排出量を減らすという観点から、今後も世界的に再エネ電力の導入を促進する必要がある。
ゼロカーボン取引所では追加性・持続性のある社会の実現に貢献していく。
<参照>
J-クレジット制度事務局(みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)|『J-クレジット制度について』,2024年1月,https://japancredit.go.jp/data/pdf/credit_002.pdf
一般社団法人日本卸電力取引所|非化石証書取引市場データ,https://www.jepx.jp/nonfossil/market-data
The International Tracking Standard Foundation|https://www.trackingstandard.org/resource/2024-i-rece-market-statistics-january