カーボンクレジットは世界的に活用されており、市場も今後拡大していく。しかし、一部の国や地域では市場の環境が十分整っていない現状がある。
2023年イスタンブールの企業、Erguvan（エルグバン）によってトルコ国内初の環境価値取引市場が創設された。今回のコラムではトルコの環境価値取引市場について解説する。

そこでトルコ政府は、2021年7月に「グリーンディール・アクションプラン2021」を発表し、同年10月にはパリ協定を批准した。さらに、2024年4月下旬にトルコ政府は地球温暖化や気候変動に取り組むための新たな法律（気候法）の策定を発表した。気候変動対策に向けて政府主体で動きが進んでいる。トルコ貿易省は以前から、グリーンディールに関するウェブサイトや、CBAM、循環型経済などを含むさまざまなテーマのウェブセミナーを通じて企業支援に取り組んでいる。

また、EUにはCBAMと呼ばれる、国境を越えた炭素排出量に合わせて税金が課せられる税制度を設けている。トルコはこれを適用除外・軽減を求めるため、EU排出量取引制度（EU ETS）の導入を検討している。

トルコの環境価値市場における障壁

大企業向けのGHGの測定・報告・検証（MRV）制度があるが、中小企業はまだ十分な関連知識が得られておらず対応が難しいという現状がある。トルコの従来の環境価値取引市場では、コスト面、安全性、アクセス面で問題があり、取引数が伸び悩んだ。さらに、需要側と供給側の両者にとって公平な取引ができなかった。

■ コスト面
環境価値を購入したい企業が販売したい企業を見つける環境が整っていない。そのため、大手コンサルタント会社やブローカーを経由して購入することになり、取引自体のコストが非常に高くなってしまう。
■ 安全面
市場の情報が不明確で環境価値市場に対する信頼感の欠如に繋がり、市場で取引しにくい。
■ アクセス面
上記のような情報をコンサルティング企業やブローカーからしか得られないという問題がある。

これら問題を解決すべくErguvanは独自の環境価値市場を立ち上げた。当市場では、自社カーボンクレジットとRECを、需要者と供給者が価格交渉なども行うことができ、直接取引することができる。需要家と供給側にとって低コストで、効率的な排出量取引市場を創り出した。

環境価値を購入したい企業は、環境価値を販売できる企業と直接つながることで多くのメリットがある。今後このような市場は増えていくだろう。日本の環境価値の取引は、今後需要がさらに高まると共に利便性という点で課題が顕著になるだろう。カーボンニュートラルを国全体、世界全体で進めるためには、そのような課題が深刻化する前に対応しなくてはいけない。
ゼロカーボン取引所では多種多様なお客様のニーズにお応えし、カーボンニュートラル社会に貢献します。

＜参照＞
独立行政法人日本貿易振興機構（ジェトロ）｜
『エルグバン、トルコ初の環境価値取引市場を創設』,2023年9月22,日,https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2023/0902/b0e7e79631d0e495.html
『欧州グリーンディールとの整合に意欲（トルコ）』,2022年11月2日,
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2022/1003/92432e1f4fe65d1b.html
『CBAM移行措置が開始、トルコでは排出権取引制度（ETS）導入が課題』,2023年10月10日,
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/10/214a8345f4662039.html
Erguvan｜https://www.erguvan.co
Exim Trade Data｜『Top Turkey Exports Partner Countries』,https://eximtradedata.com/turkey-export-data

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