業界トレンド

矛盾する非化石価値取引市場

需要が増加しているはずの環境価値。
しかし非化石価値取引市場では約定価格が低水準を推移する異常構造。
非化石証書取引市場は今後どうなるのだろうか。


需要は増加傾向

非化石証書の約定量は取引が開始した2017年度と比較して、2023年度計4回分の取引におけるFIT非化石証書の約定量(kWh)はおよそ6500倍にまで増加した。国内では電力自由化の後押しもあり証書などのカーボンクレジットを電力に付与した実質再エネ/再エネ電力の販売事業者の増加やサービス拡充により、簡単に再エネ電力を調達できる手段が確立されたことで近年は急速に取引量が増加している。さらに、日本政府は2026年度から排出量取引制度、GX-ETSへの参加を一部企業に対して義務化することを明らかにしている。今後、GX-ETSへの参加義務に際して日本での環境価値の需要はさらに高まるだろう。

FIT非化石証書の約定量推移
引用:新電力ネット『非化石価値取引市場の取引結果』,https://pps-net.org/non-fossil

また、世界的にも2015年のパリ協定を経て、125か国・1地域が2050年までにカーボンニュートラルを実現すると表明した。世界各国が急ピッチで対策を進める昨今、政府や企業をはじめ社会全体がカーボンクレジットを求める風潮へと変化している。

加えて、世界市場の分析では2030年の証書取引額予測は2022年比で1.3倍になるとのデータもある。需要の高まりだけでなく、証書・クレジット化の認証規定厳格化が徐々に始まっていることなども影響して、取引価格は今後さらに高騰することが予想されている。

※ 再エネ設備由来の電力・熱を対象に証書化することで環境価値として取引できるようにしたもの(例:グリーン電力証書、非化石証書)

取引価格は低水準を推移

しかしながら、JEPXにおけるFIT非化石証書の最低約定単価は2023年度第1回取引時に引き上げられた0.4円から第4回まで変動がなかった。非化石証書は継続的に供給過多であるために、需要に応じた価格上昇が起こらず、低価格水準が続いているのだ。その理由は証書化の規制や小売電気事業者への買い取り義務が緩いことに加え、規制強化すると消費者負担が増えるという国民全体にかかわる課題が根底にある。また、需要が増加するはずの取引市場において、価格上昇が起こらないということは証書の「価値」が低迷している異常な状況ともとれる。 需要が増加傾向にあるにもかかわらず証書価値が変わらない非化石証書。売れ残る証書の価値を今後高めることはできるのだろうか。政府の政策転換や規制強化、国民負担増加の議論なくしては状況打開が望めないかと思われる市場の行方を今後も注視していきたい。

ゼロカーボン取引所では、非化石証書の調達代行も実施しています。JEPX(日本卸電力取引所)の非化石価値取引市場へ参加するための入会金・年会費のお支払いや事務手続き、ルールや制度のキャッチアップ不要で、手間なく非化石証書の調達が可能です。調達をご希望の場合はお気軽にご相談ください。
非化石証書の調達はこちら▶https://zc-exch.jp/trading/hikaseki

<参照>
日本経済新聞|『安価続く脱炭素「証書」 緩い規制、再エネに風吹かず』,2024年4月8日日,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA01A5Z0R00C24A4000000
株式会社富士経済|『CO2・環境価値取引関連市場を調査』,2023年6月14日,https://www.fuji-keizai.co.jp/file.html?dir=press&file=23068.pdf&nocache


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